斜面を下る力学台車の速さと記録タイマーの計測
ー 教師の一言でうまくいく理科実験 ー「力学台車の実験」ー (2)ー
実験では真っすぐで、平らな斜面を力学台車が移動し、記録タイマーで動きを記録する。多くの中学校で実施される実験である。
教師になりたての頃はいろいろ操作や処理でミスするので、授業中にヤキモキしたことを思い出す。
具体的なことは記載がないので、実験条件は教師が考えて設定するのが普通だ。教科書は紙面の制約もあって、細かい指示まで多くは載せられないから、教師が経験や指導書などを見て補足することが求められる。
私も、生徒がミスしないようになるまで、気づくのに時間がかかった。
この実験を操作・処理で分けてみると、実験の記録と計測結果の処理の2つの場面がある。それぞれで、操作・手順で生徒が細かくミスを犯しやすい。いくつか重要な点を挙げておきたい。
運動の記録
運動を短時間で効果的に測る要点を上げると次のようなことになる。
・斜面の角度は低い方がいい。(5°〜10°)
・角度を変えて2回測る。
・計測は0.5秒で良い
・紙テープは70cmあれば足りる。滑走台も1mで良い。
・一人一人に2本のテープを配り、自分で実験の計測をする。
ベテランの教師でも気づいていないのが、「斜面の角度」を低く抑えることの重要さだろう。これを指示していれば、多くの実験が無駄なくうまくいく見通しができる。

計測結果の処理
紙テープを0.1秒ごとに切って貼る処理の要点は次ように考えられる。
・始点について、点・が1つ1つ見分けられるところにする。(生徒から「始点がどこにしたらいいか」と必ず訊かれる)
・5打点ごとに線を引く。(まだ紙テープを切ってはいけない)
・始点の方から紙テープの切片ごとに番号をふる。
・1・2・3・4・5までの番号で良い。多くても7番までよい
・番号を振ってから、ハサミで紙テープを0.1秒ごとに切る。
紙テープの処理で困ることが2つある。1つが、5打点ごとに切るのに、4打点や6打点で切ってしまうこと。もう1つが、紙テープの貼る順番がわからなくなる、順番を間違える。処理の早い子は確認する前に、さっさとノリで貼ってしまい、取り返しのつかないことになる。本人も異変に気づくかないで、処理が済んで終わったと、一息つくようすが見える。
もう一つ起きやすいのを加えるなら、「切片の紛失」である。1時間で実験、処理が終わらず紙テープを切って持ち帰ると、切片を1つ、2つ無くす生徒が増える。もしも、時間中に処理が終わらないなら、紙テープは切らないで持ち帰らせた方が良い場合もある。

(大日本図書「理科の世界」より引用)

https://www.eboard.jp/content/422/q/4/5/より引用
紙テープを貼ってみると、速さの増え方が一直線になっていない。切片の並びが凸凹になっているから、教師が見ると「おかしいな」とすぐわかる。生徒は、望ましい結果が見えていないで作業していると、異変に気づかず、貼り終わった後に、切片の張り替えの世話が必要になるのだ。なんとも後の祭りである。

紙テープは短くて済むなら、それに越したことがない
紙テープを並べてノリで貼る作業は、生徒にとって間違いが起きやすい処理である。切片を多く貼れば、ミスも出やすく、貼る時間も長くなる。あらかじめ必要な計測が0.5秒で実験結果は十分にわかると教師が認識すれば、50分の授業時間内で紙テープの処理を取り組むことも可能となる。その上、紙テープが短くて済むなら、ランニングコストも下がりいいことづくめだ。気づいていない教師も多いが、ぜひ試みて欲しい。