根津山の日記

日々の生活をまとめます。世田谷代田、理科教育、戦前の教育

敗れた「正露丸」とテフロン調査 

The Invention 「発明」誌

この「発明」という雑誌は知的財産権を扱う法律(特許法など)に関わる専門の広報誌らしい。飯田の少年少女発明クラブで、「読みますか」と数冊渡された。初めて知りました。その中の2冊を東京に帰るバスで目を通した。くわしいのはいいが、専門的なところは法律のことで、難解なところも多い。それでも、知らない世界を知り参考になる。

 

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『ニッポンのモノづくりと知財部を応援する 月刊「発明」』 2023年10月号 

 

正露丸」は商標か否か

2023年10月号に正露丸が商標、ブランドとして保護されるかどうか詳しく紹介されていた。この正露丸は大正時代の「クレオソートを主剤とする胃腸丸薬」、下痢止めで知られている。T社の正露丸の商標の使用について独占的立場を保護するための訴えがされた。正露丸について大きく市場を占有するT社は商標を持っていて、1954年と2005年の2回にわたって商標の侵害を主張した。しかし、裁判になり、1回目で地裁は原告T社の主張をは認めたが、高等裁判所は斥けて一般名称という扱いとした。上告し最高裁でも確定した。商標の権利はT社にまだ残っているが、ブランドとして権利はない状態になっている。2005年は「正露丸」のパッケージの商標を侵害しているということで争ったが2回目も裁判では負けてしまった。この2回目の裁判で「知的財産権」で商標について、市場でのアンケートを判断材料としていることを知った。2回調査を実施して証明しようと試みたが、2回とも調査方法などの観点から証拠として採用されず、パッケージの「正露丸」が類似していることで権利を侵害したことにはならなかった。

「テフロン調査」と「サーモス調査」

このときに行われたのが日本国内で行われた「テフロン調査」である。(こんな調査があるのかと、初めて知った。なかなか面白い名前がついている。)アメリカのデュポン社が権利を有するフッ素樹脂加工のことを「テフロン加工」と呼ばれている。これが広く普及したため、この商標が市場で一般名称として扱われている。このことから、商標がブランドとして扱われているかどうか調査するのこう呼んでいる。テフロンのように広く使われている名称は多くある。例えば、「セロテープ」「ホチキス」「ポストイット」「ヤクルト」「メンソレータム」などがあたる。この裁判ではテフロン調査を行い、T社の商標がブランド名として認知されているかアンケートで調べられたのだ。「「テフロン」はブランドの名称でしょうか」というような質問が市場で調査されました。

正露丸のケースでは裁判所に証拠として採用されなく、T社の権利は認められず敗訴してしまった。ブランドとして多くの市場を占有するから、商標として保護されるかというと、そうではないことだった。私にとっては、とても興味深い展開だ。

もうひとつ、一般名称の代わりにブランド名をが使われているか調べるのが「サーモス調査」として名付けられている。テフロン調査とはまったく異なった手法で行われている。おおよそをいうと、「魔法瓶」が一般名称であるが、魔法瓶と呼ぶ代わりに「サーモス」呼ぶことがある。それが一般名称なのかブランド名なのかを調べる質問調査がアメリカで行われた。このことでサーモス調査と呼ばれるようになった。結果は「普通名称」ということで、thermosという名称を一般に使って良いとなり、Thermosはブランド名であると、何とも調整が効いたけっかとなったらしい。

ただし、正露丸のこの案件では、サーモス調査を商標の調査に使わなかった。

 

おわりに

知的財産権とは発明にとって重要なしくみだと思う。法律的な内容であるんで、難解なのだが発明を考えるとき他人の考えや創作に敬意を払うこともわかる。基礎基本であるが、さまざまな創造を扱うSTEAM教育に組み込みたいとと思った。