根津山の日記

日々の生活をまとめます。世田谷代田、理科教育、戦前の教育

実験の結果が不一致、失敗も成功もなし 1


さて、先日目に止めた新聞の記事に、小学校の理科指導の課題として、「実験に成功も失敗もなし」「実験結果が不一致でも思考を深める」の2つがありました。それについて考えてみようと思います。

 

◉ 楽しいけれど、手間がかかる

 

記事では、小学校理科の指導で児童、先生へのアンケートが取り上げられていました。児童の受け止めが、理科は「好き」な教科として約80%の子どもた認めています。先生はどうかというと、約80%の多くが「大好き」「好き」と認めています。しかし、学級担任として、理科の指導の知識・技能の不足を感じています。それが、若い先生ほどその割合が高いそうです。実験器具の扱い方、理科の知識の不足も課題なのだそうです。最も顕著なのが、「観察・実験の結果が教科書通りにならない場合の対応」なのだそうです。そのときの手立てがわからず、理科指導への苦手意識を持ってしまうのです。(塚田昭一 十文字学園女子大学、「実験に成功も失敗もなし」日本教育新聞2023年1月2日発行) もう一つの記事がありました。理科の授業の「導入」について「特別のなパフォーマンスをする必要はない。導入では・・・きっかけを与えてあげればよい」とある。「ごく当たり前の現象でも、・・・(子どもから)さまざざまな考えのちがいが見えてくる。その違いが問題意識を高めることになる。視点を明確にした観察をすることにもなるため、漠然と眺めていては気付くことができないことも見えてくる・・・」とありました。また、「子どもたちの知識、体験差は指導のしにくさにつながると考えられがち。しかし、理科の授業では、その差があるからこそ、考えの違いが生まれ、それを確かめたいという追求意欲が高まることになる。」そして、授業の「まとめ」では「実験結果がグループで一致しなかったり、教科書通りにならなかったりすることを敬遠しがち」(鷲見辰美 筑波大学附属小学校、「実験結果不一致でも思考深める」日本教育新聞23年1月2日発行)

 

◉ 違うことをどうとらえるか

子どもは思わしくない結果になると、残念な気分になりますから、小学校でなくても、どの先生も実験の結果について敏感になります。みなさんも、このような経験は幾度もすると思います。そのとき、子どもにとって結果の良し悪しの拠り所が教科書です。あるいは、友だちにたずねることもあるでしょう。教科書を見てどうも思わしくない結果のとき、もやもやして先生に訊くのは自然の成り行きです。さて、こういうときどう対応したかな?と思い出しながら考えてみました。

まず、思い出したのが実験の結果にはどのような意味があるか、1年生のはじめのガイダンスで取り上げました。実験の結果は、事件がおきたときの「証拠だよ」と呼びかけます。たとえ思わしくない結果が出ても、証拠なので、勝手に変えてはいけないと考えるでしょう。そして、考察では実験の結果(証拠)に基づいて、ねらい(犯人はだれか)を考えるというようにして、実験に取り組むように促しました。そして、実験はうまくいかないこともあります。私も、「失敗」とは言いませんでした。たしかに、操作が十分ではないのですが、失敗という扱いはしませんでした。挽回するしかないと、生徒と相談します。実験のようすや種類にもよりますが、いくつか対応の方法があると思います。まず、「考察で操作のどこかに問題があったか振り返る」のはどうでしょうか。あくまで結果を大切にする態度を追及するのです。あるいは、考察のときすぐにできるようにしておいて「やりなおし」も提案しました。そして、ケースによっては時間を決めて、放課後にやることもありました。班全員がやり直したいという気持ちまで、なかなかならないのですが、残ってできる子たちだけでもやるときがありました。

意見は分かれるかもしれませんが・・・そもそも時間のないときは、隣の班や協力する班のデータに提供してもらい活動を継続しました。そこで、失敗したデータは捨てないで残し生かすように言います。引用なので、提供してくれた班名を記述することとお礼を忘れないようにさせました。

理想的なデータが出るのが当たり前ではなく、実験ではデータの使い方に判断が必要なことを学べると思います。また、データを提供してもらい、その班と交渉したり、データの違いについて相談することも大事なことかもしれません。ただし、現実の小学校の授業のようすを見ると簡単とはいかないでしょう。わずかでも数字が合わないと失敗と考える悲観的な子ども。ちょっとぐらいずれていても、平気で気にしない無頓着な子ども。いろいろいます。そして、「子どもに正しいことを教える」や「最後は先生がまとめる」授業が良いとされているかもしれません。「予定通りいかない実験は面倒臭い」、「厄介なもの」かもしれません。解決策は先生次第ですが、先生も子どもも「失敗しても大丈夫」と思える学級の明るさもほしいです。また、先生が最後まで付き合うと腹を決めて取り組むのが重要なのかもしれません。

◉技能の観点をどうするか

実験の技能はかつて理科の観点の1つにありました。どう実験のようすを見とるか、試行錯誤したことを覚えています。観点の重要な資料として、実験の結果、データで実験の技能をみとることができるのでしょうか。難しい判断になります。活動中に実験がうまくいくようにいろいろ注意ははらいます。しかし、最終的に、私は、積極的に操作のミスを評価には加えませんでした。これについては、続きで書きたいと思います。

 

毛管現象