気象庁訪問
2024年3月27日
東京都港区虎ノ門
2020年に大手町から虎ノ門に引っ越しこした気象庁の本庁舎を訪問しました。もともとここは港区の土地だったところを買い取って、港区と建物と共用しています。(港区のプラネタリウム、科学博物館、教育センター)
ご案内くださったのは、三浦郁夫さん(気象庁)です。館内の引率は田中さん(気象予報士。高校教師)、呼びかけは学芸大学附属中学校の河野晃先生です。
私が初めて知ったこと:
〇天気図の前線はまだ手で描いています。
天気図の気圧はデータで送られて、スパコンでほとんど描かれていますが、前線など一部は人間が判断して手で描いています。また、シベリアの高気圧では、異常な値が示されることもあるので、判断してデータから削除することがあります。まだ、降雨予想に使われるレーダー雲の流れの予測も、人間の判断の方が正しいことがあります。
〇天気の記録はしなくなる。全国で機械観測がはじまる。
この3月で、すべての気象観測がロボットになり、目視による気象観測が、東京・大阪を除いて快晴か晴れなど、天気の記録をとらないことになりました。これまでは、日本中の気象台で目視で雲量を計っていました。注意するところは、天候の記録は取らないけれど、天気の予報はするそうです。
○全国自動観測がはじまる
気象台で行われてきた、人による観測が終わり、自動観測に替わることになりました。機械で観測できるものは残りましたが、意外にも天気(晴、雨、快晴、くもりなど)の観測が記録されないことになりました。雨が降っていることや、日射の強さは測ることができるのですが、雲量までは測ることはできないのです。
気温や湿度を測るセンサの上部にはファンがついていて、常に換気を行ってることを知りました。百葉箱も素通しのつくりで風通しがいいのも同じ理由です。換気が意味をもつということは認識していましたが、自動計測の装置であらためてわかりました。
風速計は超音波を使って計測していて、プロペラを使った風速計とともにあります。プロペラの弱点として降雪時に動かなくなるのだそうです。そこで、機械部分が少ない超音波計測をしていて、加え融雪のしくみもあるのです。
雨量計は意外なほどメカニカルな仕組みでした。0.5mm単位で測ることができますが、仕組みは「ししおどし」(鹿脅し)です。そのほかに、雨が降っているか判断だけできるセンサも別にあります。
〇積雪の値が大きかったり、小さかったりする。
積雪はその土地の様々な条件があって、大きくなることもあるし、小さくなることもあります。観測所は地面が芝生が普通なので、アスファルトより積もりやすいことがあります。しかし、観測所の風が強いと、吹き飛ばされて降雪量は多いのに、積雪は小さいこともあります。ブリザードのある北海道では風で雪がなくなり、積雪がないときもあります。
〇ラジオゾンデ
ラジオゾンデは全国18か所で観測に使っています。時間はGMT (グリニッジ標準時)に合わせて毎日2回、9時と21時に観世界同時に行います。日本の場合、ほとんどが海に落ちるので、観測のセンサ部分は環境に配慮して海で生分解するプラスチックでできているそうです。高層の気圧、気温、位置を記録しています。
〇天気の知らせ方
旗→新聞→ラジオ→テレビ→インターネット(平成8年広報開始、平成14年予報開始)
通信網の発達は、気象の情報の質や量が上がってきました。例えば、地震計の情報は各市町村に地震計が設置されて、その情報を気象庁が一元化してあつめることができるようになりました。地震計の設置、管理には費用がかさむが、取り組みが広がり、それを共有できるようになって、情報の量、質が上がっているそうです。
〇ビックデータ
大型コンピューター(スパコン)は清瀬と虎ノ門にあり、気象と地震では別に扱っています。
清瀬には、「東京管区気象台」と「気象衛星センター」、そして「
〇進路として気象庁にはいるには
気象大学校出身 15名/年 (むかしは女性は入れなかったらしい・・・)最近は大学の理系専門出身者も多く見られます。専門は気象ばかりでなく、天文もいて、物理・化学などの出身者もいます。採用のときの問題は物理で行っています。仕事では、物理として気圧や温度など、熱力学が多く使われています。全国で5000人の職員がいて、1000人が東京・気象庁にいます。
〇気象予報士
気象予報士の試験は合格率5%です。2000人ぐらい受験します。
火山のモニター @地震観測
〇気象の学習に求めていること
・大気の流れ・・・「どうしてこうなるのか」ということを考えるような学習を重点にしてはどうかと思います。大気の流れなどを大きく見て、今の天気がどうしてこうなるのか自分で考えられるようにしてほしいです。
・天気を学ぶ楽しさや意義・・・天気図を描いて、見て「未来を予想できる」のが気象の仕事です。中学で学ぶときに、自分で資料やデータを集めて、自分で考えることができるように指導してほしいです。そのため、天気図、レーダーなど基礎的な資料を見て、未来の天気を考える習慣が身につくと嬉しいです。
・天気にはずれがある・・・「天気がはずれる」と言われることがありますが、天気にはよく「ずれ」ることがあります。条件が異なっていて、時間が遅れたり早くなったりします、また、大気の流れによって、予想していなかった地域が晴れる所もあれば、雨が降ることもあります。山など条件が異なるので、当たらないこともあります。これらが「ずれ」です。それを考えるのが楽しいと感じられると良い学びになります。
・気象情報は平和の象徴・・・戦前、戦中の日本も経験したことですが、紛争がある地域では気象情報が封印されます。具体的には、北朝鮮やイランイラク戦争の時にデータが送られてこなくなりました。世界中が利用している気象情報ですので、それぞれの果たす役割は重要です。広大な地域を治める国や地域が情報を出さなくなると困ることがあります。
・ビアクネスモデルと低気圧の雲・・・現在使われている温帯低気圧はビアクネスモデルと言われているものです。低気圧の中心から南にある温暖域に雲がない図が見られます。これは明らかに間違いです。それでもなかなか教科書を変えるのは難しいです。新しい気象の情報と学校のカリキュラムとずれを感じます。
〇 最後のツアー・館内のご案内
三浦さんは気象大学校を出て、気象庁に入り、定年を迎えたそうです。広報、気象台長などを歴任されました。「天気予報」が「気象情報」に変化していく場にいつもいたのです。また中学校の教科書にも協力したそうです。その後、再任用ではたらいています。とうとう、明後日3月29日で再任用も満期となります。最後にこのツアーの案内をされて、「いい仕事が最後にできた」と言ってました。
<<ツアーで感じたこと>>
気象の最前線にいた三浦さんの生の声・解説は興味深いことでした。解説がとてもわかりやすかったです。まだまだ、いろいろなお話を伺いたいと思いました。今日だけでも、たくさんのことを教わり、授業に使えること、授業をどう考えたらいいか、やりたいことがいくつもできました。
2012年に一度気象庁を研修で見学しています。そのころは、部屋が狭くて、モニターが近くで見えました。印象として、地震の方が頻繁に地震が起きて、地震の部屋のあわただしさがありました。何かあると、班の皆さんが集まって震源などを判断していました。そのころは、まだ東北大震災の影響か、頻繁に地震があったかもしれません。